Aさんは、ある機械メーカーの総務課に配属されました。
担当する仕事は、工場で働く人達が気持ちよく仕事ができるように様々な面でサポートする事で、少し荷が重い仕事です。
先輩達は皆忙しく余裕が無い様子で、仕事の指示をなかなかしてくれません。
先輩の仕事内容をよく観察し、
就業規則を読み込んで理解し、本を買って労働関係の法律を学び、外国人労働者と会話をするため、英会話の勉強も始めました。?
少し余裕が出来ると、毎日つまらなさそうに仕事をする人や、いつでも楽しそうに仕事をする人など、いろんな人が居る事に気付きました。
いつも楽しそうな先輩にコツを尋ねると、
「なんでも都合よく解釈する事」と分かり難い答えが返ってきたので、詳しく尋ねると、
「バカらしいかもしれないけど、毎日の仕事が自分に力を付けてくれていると思い込めば、仕事が嫌なんて思わなくなるよ」と、教えてくれました。
「自分に力が付いたと、どうやって判断するんですか?」と尋ねると、
「自己採点だから、最初から勝負に勝ったようなもの」と返ってきました。
Aさんはこの考え方が気に入り、全面的に取り入れてみる事にしました。?
ある時、工場で働く社員がフォークリフトにはねられるという事故が起こり、Aさんが後処理をする事になりました。
工場に出向いて事故の当事者の話を聞くと、見通しが悪い曲がり角での事故で、以前から何度も危ない目に合っていたという事が分かりました。
様々な書類を作成して処理は終わらせましたが、再発防止策が何も取られないままになっている点が気になりました。
先輩に相談しても、「余計な仕事が増えるだけだから、放っておけばいい」としか言ってくれません。
Aさんは、
『工場の人を自分の大切なお客さんと思って仕事をしなさい』と、課長がいつも言っている言葉を思い出し、
コーナーミラーの値段や設置工事代金、工事期間などを調べて見積りを取り、このままでは大きな事故につながりかねない事を記載した報告書とともに提出し、設置工事が決定しました。
すぐには工事に取り掛かれないため、それまでの間は問題の箇所に小さな鏡を置く事で対応しました。?
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